歴史と民族の記憶

 みなさん、こんにちは。福井県議会議員の井ノ部航太です。昨年中は多くの県民のみなさま方から勉強をさせていただきました。心から感謝申し上げます。今年も、皆さまの代弁者として県政の場で頑張ります!

 さて、新しい年を迎えて、私は日本と東アジア諸国との関係について考えてみました。

 日本を訪れる外国人観光客は年々増えて、昨年は2404万人にも上りました。2011年には622万人でしたので、驚異的な伸びです。中国、韓国、台湾、香港と東アジア諸国からのお客様が上位に並び、訪日客全体の72.7%を占めています。福井県を訪れる方もほぼ同様の傾向を示しています。

 私が大学生時代に香港に貧乏旅行をして、一泊1,000円程度の宿や100円でおいしい定食を食べることができたのも今は昔。完全に物価は逆転をしてしまい、「日本はなんでも安い!」という認識が、アジアでも広がりつつあります。これは日本経済が勢いを失っていることの証明であり、複雑な思いがします。

 さて、このように人の交流が活発化していることは大変良いことですが、一方で東アジア諸国とは長年「歴史認識」という外交課題があります。日本人は中国や韓国からはいつまで謝罪を求められれば良いのかとうんざりし、反面、中国や韓国人から見ると、日本はいつまでたっても謝罪しないというように処罰感情を高ぶらせています。戦後72年たっても対立感情が消えるどころか、日本、韓国、中国ともに高まっていくような事態は明らかに異常です。これは、内政の不満を外国に向けて目を逸らさせるという「内憂外患」政策に他ならないと考えますが、特に近年は日本もそのような政治姿勢を示しており、私は大いに憂慮しています。

 これについて、ニューズウィーク日本版の最新号に「戦争の物語」というコロンビア大学のキャロル・ブラック教授が、日中韓の間にある歴史問題について、様々なバックグラウンドを持つ学生とゼミナール形式で議論した模様が掲載されていました。この記事にインスパイアされて、私なりの解決策を整理してみました。

 

〇「歴史」とは何か、「記憶」とは何か

 歴史とは、歴史家が「歴史書」に書くもので、史実を求める学術成果として主に学者や一部の読者に読まれるものを指します。

記憶とは、軍靴の足音に恐怖や不安を感じる感情も含むもので、学校の教科書や記念館、式典、映画や大衆文化、政治家のスピーチなどを通して多くの人々に伝達されるものです。

 日中韓の間にある歴史問題は、お互いが自国民の「記憶」をあたかも史実に基づいた「歴史」であるかのように主張していることにより、埋めがたい溝を創り出しています。

 

〇民族の記憶は衝突する。

民族の記憶はナショナリズムとも密接な関係にあるため、決して他の国の持つ記憶を自国の記憶に屈服させることはできません。

 さらに厄介なことに、民族の記憶はいとも簡単に書き換えられてしまいます。時の政権の思惑によって、政治家の演説や教育、マスコミの報道によっても変容していくものです。このように不確実な主張をぶつけあっている状況では、歴史問題はいつまでたっても解決を見ることはできないでしょう。まず私たちは、時に歴史と民族の記憶は矛盾することがあるということと、記憶に囚われすぎると歴史から学ぶことを妨げるということを良く認識し、この2つの呪縛を解き放つ必要があります。

 

〇万難を排して共同見解をつくりだすべき

 それでは、本格的に解決するにはどうすればよいでしょうか。

 私の考えは、中国、韓国と共に歴史の共同見解を作り上げることです。記憶の入る余地を極力排除して、各国の資料を持ち寄り、科学的に検証し、合意する手法をとるべきです。しかし、共同研究を進めていくうちに、自国の主張が間違っていることを証明する場面に必ず直面するため、これまでに何回も頓挫しているプロジェクトでもあります。

しかし、これ以上歴史認識をめぐって紛争を続けることは、どの国の利益にもならないことは明白です。このまま未来世代に解決を先送りすることなく、私たちの世代からこの困難な事業に取り組み始めるべきだと考えます。

 

〇日本国憲法の精神に帰ろう

 この原稿を書いているときに念頭に浮かんだのは日本国憲法の精神でした。私は改憲の議論は大いにすべきではあるが、「国民主権」、「基本的人権」、「平和主義」という根底に流れている憲法の精神まで大きく改変する必要はないという立場です。特に日本国憲法の前文はどの国にもない高邁な理念に基づいているもので、私のもつ政治理念の上位に置いています。

 「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」

 日中韓で従うべき普遍的な法則とは、それこそ共通の歴史認識そのものではないでしょうか。

 日本はもはや一国のみで経済繁栄を得られる時代ではありません。困難な事業から目をそらさずに、共通の歴史認識を創り上げ、アジア諸国との信頼関係を築き平和で安定した未来をつかむ努力をしなくてはならないと思います。

 

 今年からは、福井の地で歴史や平和の研究を共同で行う国際的な枠組みをスタートさせます。東アジアで心の通じ合う未来を追求することのできるよう、国境の壁を超えて頑張っていきます。ご関心のある方は、ぜひご参加ください。ともに未来を創っていきましょう。

以上